親の家に増築して一緒に住みたい――そう思ったとき、名義や登記のことまで考えていますか?
構造や費用の話は進んでいても、「建物登記」や「共有名義」「贈与税のリスク」まで気が回っていなかった…というケース、実はとても多いんです。

本記事では、実際のご相談事例をもとに、
登記でつまずかないために知っておきたいポイントをわかりやすく解説。
これから増築をお考えの方が安心して進められるよう、注意点や準備のコツをお届けします。

はじめに

おはようございます!
林谷光洋です。

今回は、「親の家を増築して住む際の建物登記」について、実際に寄せられたご相談をもとに、名義や持ち分の考え方、登記手続き上の落とし穴とその対策をわかりやすくご紹介します。

親御さんの家を増築して同居する計画は、一見シンプルに思えますが、

  • その増築部分の所有者は誰になるのか?
  • 登記はどう分けるのか?
  • 贈与扱いになるのでは?

といった思わぬポイントで悩まれるケースも少なくありません。

このブログでは、実際のケースをもとに、建物登記の流れや注意点、後悔しないためのチェックポイントを丁寧にまとめました。
同じようなご計画をお持ちの方にとって、「知っておいてよかった」と思えるヒントになれば幸いです。

一体型増築で登記できない?想定外トラブルの実例

あるご家族の増築工事を、弊社で担当させていただいたときのことです。
親御さんの名義である土地と建物に、息子さんが住宅ローンを組んで増築をされるというご計画でした。

今回の増築は、母屋と廊下でしっかりと接続された“一体型の構造”。
見た目にも機能的にも、完全にひとつの家として完成していました。

当初は、「増築した部分だけを息子さん名義で登記する」という前提で、計画は順調に進んでいました。

一見すると自然な流れのようにも思えますが、実は登記上の大きな落とし穴が潜んでいたのです。
建物の構造上、分けて登記することができないという現実が、この段階で明らかになったのです。

このとき、土地家屋調査士の先生からいただいたアドバイスは──

「今回の増築は建具などで仕切られておらず、明確に分離できない一体型構造です。そのため、単独名義での登記はできず、原則として共有登記になります。」

寝耳に水だったこの指摘に、相談者の方は驚かれていました。
けれど実はこのようなケース、決して珍しくないのです。

登記の仕組みは一見シンプルに思えても、構造・法律・税務が複雑に絡み合うため、「知らずに進めてしまっていた」ことがトラブルの引き金になることもあります。

建物登記と土地登記の違い|意外と知らない基本知識

そもそも建物登記とは?

建物登記とは、建物の「存在」と「所有者」を国に正式に登録する手続きのことです。
新しく家を建てた場合は、まず“建物が完成しました”と知らせる『表題登記』を行い、その後、所有者の名前を記す『保存登記』へと進みます。誰が、どの建物を、どんな状態で所有しているのかを明確にしておくことで、万が一のトラブル時にもスムーズに対処できるようになります。

また、家を売買する際には、所有権を移す『移転登記』も行います。
こうした建物登記の一連の流れを知っておくと、将来的に困ることがぐっと減ります。

土地登記との違いは?

一方で、「土地登記」は建物とは別に、“その土地自体に関する情報”を登録するものです。
たとえば所有者は誰か、どれくらいの面積か、担保(抵当権)はついているか…などが明記されます。

今回のご相談でも、建物は親子の共有名義で登記されましたが、土地の登記はお父様の単独名義のままでした。
これは珍しいことではなく、建物登記と土地登記は別々の登記として管理されるのが通常です。

そのため、「建物を増築したからといって、土地の名義が自動で変わる」ということはありません。
登記は“建物”と“土地”でそれぞれ個別に手続きが必要、という点はぜひ押さえておきたい基本です。

増築・登記で揉めないために|名義・持ち分・贈与税の注意点

増築の形態を確認する(分離型 vs 一体型)

建物登記においてまず重要なのが、「増築部分が物理的に独立しているかどうか」という点です。
これを判断する大きな軸が、“構造の一体性”。

例えば、増築部分が壁や建具などで明確に区切られており、独立した空間として機能している場合は、「分離型増築」とされることが多く、その部分だけを別名義で登記することも可能です。

しかし、今回のご相談のように、廊下や部屋がシームレスにつながった「一体型増築」の場合は話が変わります。
建物全体が一つの住宅として評価されるため、建物登記では“共有名義”が原則となります。

つまり、構造のつくり方ひとつで、名義の付け方や税務リスクまで大きく変わるということ。
将来的な相続や売却を見据えるなら、増築前の段階で構造をチェックし、登記の専門家に相談することが不可欠です。

持ち分割合は「評価額」で決める

登記の際に悩まれることの多い「持ち分割合の決め方」。
一見すると「面積(平米数)で割れば簡単そう」と思いがちですが、実はそれでは不十分なケースもあります。

通常ですと、以下のように不動産の評価額をもとに持ち分割合を算出します。

  • 既存建物(父親):約500万円
  • 増築部分(息子):約900万円
  • 合計:約1,400万円

この金額に基づき、例えば父:36%、息子:64%という持ち分割合を登記に反映します。

このように、評価額をベースにすることで、将来的に税務署から「贈与にあたるのでは?」と指摘されるリスクを避けやすくなります。

特に親子間で共有登記を行う場合は、贈与税の発生を防ぐためにも、専門の税理士に相談することが非常に重要です。

持ち分割合の判断を軽く見てしまうと、あとから思わぬ出費や手間が発生することも。
しっかりと資料をそろえ、評価の根拠を明確にしたうえで登記することで、安心して住まいを引き継いでいける体制が整います。

専門家に早めに相談する

「登記は建物が完成してから考えればいい」と思っていませんか?
実はそれ、あとから後悔しやすい落とし穴のひとつです。

建物登記に関しては、増築の設計段階から土地家屋調査士や司法書士と連携して進めるのが理想です。
構造の分け方、契約内容、持ち分の決め方など、すべてが“あと戻りしづらい”工程に関わってくるからです。

今回のケースでも、建物が完成してから「登記できない!?」という事態になり、あわててご相談をいただきました。
もし最初の段階でご相談いただいていれば、構造を分けて分離型登記にする、あるいは契約内容にひと工夫加えるなど、より柔軟な選択肢が取れたかもしれません。

登記の専門家に早めに相談することは、「登記のため」だけでなく、将来の相続・税金対策・資産管理まで見据えた家づくりの第一歩にもなります。

悩む前に、まず一度プロの意見を聞いてみる。
それが、安心して住み続けられる家づくりへの近道です。

知っておきたい!建物登記のチェックリスト

建物登記は「家が完成したあとにやればいい」と思われがちですが、実は事前準備がとても重要です。
特に増築や共有名義が関係する場合は、登記前に確認しておくべきポイントがいくつもあります。
以下のリストをもとに、スムーズな登記準備を進めましょう。


🔲 増築部分は分離できるか?
 建具や壁でしっかり仕切られているかを確認しましょう。
 構造的に分かれていれば、増築部分のみ別名義で登記できる可能性があります(=分離型増築)。

🔲 評価額を示す書類を用意
 固定資産税の通知書や建築見積書など、建物の評価額を算出するための資料を早めにそろえておきましょう。

🔲 贈与税のリスクは専門家へ相談
 とくに親子間での共有登記では、持ち分のバランスによって贈与と見なされることもあります。
 税理士や司法書士と連携し、事前にリスクを確認しておくと安心です。

🔲 共有持ち分とその根拠を明確に
 登記申請には、誰がどの割合で所有するか(共有持ち分割合)を明記する必要があります。
 評価額など、算定の根拠資料を添えておくことで後々のトラブルも防げます。

🔲 土地の登記内容との整合性をチェック
 建物だけでなく、土地の名義や抵当権の有無にも注意を。
 建物登記と土地登記は別物ですが、抵触や齟齬がないか事前に登記簿を確認しておきましょう。

調査士・税理士が語る登記ミスを防ぐコツ

実際に今回の登記対応にご協力いただいた専門家の方々から、心強いアドバイスをいただきました。

まずは、現地確認を担当された家屋調査士のコメントです:

「『建物は一体だから共有しかない』という判断は、図面だけではわからないことが多いんです。現地の構造を見て初めて判断できるケースもあります。だからこそ、増築を検討し始めた早い段階で登記の視点からアドバイスを受けておくことが、トラブル回避のカギになります。」

また、登記に伴う税務リスクについて、税理士の先生からも大切なポイントを教えていただきました:

「親から子へ持ち分を移す場合、内容によっては“贈与”と判断され、贈与税の対象になる可能性もあります。そのため、評価額を根拠にして適正な持ち分割合で登記することが重要です。きちんと準備しておけば、税務署からの指摘リスクも最小限に抑えられますよ。」

登記は“書類を出すだけの手続き”ではなく、将来の相続や税金、財産の守り方までを左右する重要な節目です。
だからこそ、信頼できる専門家との連携が何よりの安心材料になるのです。

まとめ|建物登記は“未来の安心”のための第一歩

たとえ小さな増築でも、建物の登記は決して軽視できません。
なぜなら登記は、不動産という“資産”の状態や所有関係を明確にし、将来の相続・売却・融資にまで関わる「権利の地図」となるからです。

特に今回のように、親子間で増築を行うケースでは、名義・持ち分・税金など、見えにくいリスクが潜んでいることがあります。
「あとから困らないように」「大切な家族のために」――そんな想いを形にするには、事前の話し合いと登記への丁寧な向き合い方が何より大切です。

もし今、同じような計画をご検討中の方がいらっしゃれば、この記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。

🔎 増築に関する登記で、お困りではありませんか?
「親の家を増築したいけれど、名義や登記が不安…」そんなご相談が実際に増えています。
林谷ホームでは、一体型・分離型を問わず、増築に関するご相談に丁寧に対応しております。

🏠 どうぞ安心して、増築のご相談をお寄せください。
👉 増築・登記に関する無料相談はこちらから